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ビールができるまで

手作りビールができるまでの過程を紹介します。

何種類かの麦芽をブレンドして砕きます。

湯を加えて保温することで麦芽自身の持つ酵素を活性化します。 50度で20分保って麦芽中のたんばく質をアミノ酸に分解し、続いて66度で60分保ってでんぷんを糖に分解 (糖化) します。この温度と時間によっても味が変わります。 右の写真はイソジンでよう素でんぷん反応を見た例。左が糖化前、右が糖化後。

麦芽の層の上から78度の湯をかけて下の鍋に麦汁を取り出します。 ここまでが面倒な場合は、東急ハンズや通販などで麦芽エキス缶を買ってきてお湯で薄めます。 続いて麦汁にホップを加えて1時間煮ます。途中何回かに分けてホップを加えます。

麦汁を冷やして滅菌した瓶に移し、酵母を加えて発酵させます。ラガーは10度で2週間、エールは20度で1週間ほどです。寒いと電球で加熱し、暑いと冷蔵庫で冷やしています。

発酵が終わったら瓶に詰めて少し糖を加え、打栓器で王冠を付けます。打栓器がない場合はペットボトルに詰めます。再び20度で数日間保温して炭酸を入れます。

エールは8度で1か月、ラガーは1度で3か月以上熟成させます。Enjoy!

よく聞かれる質問

ビール酵母 Q: 売らなければビールを作っていいの?
A: お酒は売るにも (酒9) 作るにも (酒7) 免許が必要です。無免許で作ると5年以下の懲役又は50万円以下の罰金となります (酒54)。アルコール1%未満ならその対象になりません (酒2)。 ビールを作るのにこのような規制がある国は、 ウィキペディアの Homebrewing によると先進国では日本以外見当たりません。 (「酒9」は酒税法第九条を意味します)

Q: 個人でお酒を作る免許を取れないの?
A: ビールの場合は年間60キロリットル、 つまり大瓶約10万本以上作らないと免許を受けられません (酒7-2)。 また、酒税が諸外国の10倍ほどの1リットルあたり220円 (酒22)、 つまり60キロリットルなら年間1,320万円です。個人ではまず不可能です。

Q: 梅酒は作っていいの?
A: お酒を買ってきてそこに植物を浸してエキスを取り出すだけなら、お酒を作っているわけではないのでだいじょうぶです。 ただし売るには免許が必要です。

Q: どうしてビールを作ろうと思ったの?
A: そば、パン、ケーキなどいろんな手作りの趣味がありますが、ビールは比較的簡単にプロに近付くことができて、費用も安いからです。ビール大瓶1本分の材料費は最高にぜいたくして60円くらいです。

Q: 日本酒は作らないの?
A: 面倒なので作りません:-) ビールやワインは古代文明のころからあったらしいですが、極端に言えば麦やぶどうは放っておけば酒になるくらい単純です。米が酒になるには麹と酵母の微妙なバランスが必要で技術的に複雑なので、プロの方々にかないません。

Q: ワインは作らないの?
A: 作ります:-) が、おいしくできません。おもな原因は、日本のぶどうは糖度が低く、甲州種など一部を除いてワインに向かないことにあります。日本でおいしくできる果実酒には、りんご酒 (サイダー)、さくらんぼ酒、果物ではありませんがはちみつ酒 (ミード) があります。

Q: 焼酎やウイスキーは作らないの?
A: 蒸留酒なら室温で長期間保存できるのも魅力です。しかし、蒸留が少し面倒なのと、蒸留によって一部の有害物質も濃縮されるのが恐いのと、おいしいウイスキーはプロの方々に勝てなさそうなので作りません。

Q: 炭酸はどうやって入れるの?
A: 酵母が糖を食べてアルコールと二酸化炭素を吐き出すのが発酵で、その性質を利用します。瓶詰めの前に少し糖分を加えて栓をすると、瓶の中で酵母が吐き出す二酸化炭素が閉じこめられて炭酸が入ります。 市販のビールは人工的に二酸化炭素を加圧して入れていることがほとんどです。

Q: 黒いビールは何が違うの?
A: コーヒーのように深煎りした麦芽を使います。工業製品のように麦芽にも諸元表があり、それを見ながらレシピを組み立てます。麦芽やホップは産地によって風味が違うので、ある国のビールを再現するにはその国の原料を使います。

Q: 材料はどこで買うの?
A: 麦芽は穀物を輸入する商社から数十キログラムずつ分けてもらっています。特殊な麦芽やホップ、酵母はおもにアメリカから通販で買ってます。

Q: 水はどうするの?
A: 今は井戸水を使っています。以前は水道水を浄水器でろ過して使っていました。 ビールの種類によって、硬度や pH 値を調整するためにカルシウム塩や乳酸を加えることもあります。

Q: 一度にどれくらい作るの?
A: 14リットル (大瓶21本) くらい作ってます。 レシピの多くが5ガロン (19リットル) 用に書かれているのでそれで作る人が多いですが、手持ちの鍋、発酵容器、冷蔵庫の容量に合わせてます。

Q: 作るのにどれくらい時間がかかるの?
A: 仕込みに6時間くらい (実際に作業しているのはその半分)、瓶詰めに2時間くらいかかります。 発酵と熟成に1か月から数か月かかりますが、温度制御が自動なので放っておけます。

Q: 道具は何を使うの?
A: 大きな鍋が2つと温度計、ビールを移すためのビニルチューブがあれば作れます。 瓶に詰めるには打栓器、アルコール濃度を推定するためには比重計を使いますが、 それらは東急ハンズなどでも売ってます。 ほかに作業を楽にするため、底に排水口の付いたポリバケツ、自作の温度制御装置や熱交換器などを使ってます。

Q: 手作りビールキットはおいしく作れるの?
A: 1回目からおいしくできた話はあまり聞きません:-) おもな失敗の原因は、発酵温度を守れなかったこと (最悪でも指定の±5度以内)、容器の殺菌が不十分なことだと思います。あとは乾燥酵母の代わりに生酵母を使うととてもおいしくなります。

Q: 市販のビールでお薦めの銘柄は?
A: 最近、日本の地ビールはレベルが高くなりました。輸入ビールも定温輸送が増えて改善しました。 直営のレストランか信頼できるお店で冷蔵庫で保存されていれば、はずれはないと思います。 ぜひ自分の好きな味を探すことをお薦めします。

Q. 宴会に持って行ってみんなで飲んでいい?
A. 「ビールを動かすな、人が動け」と言われるほど移動すると味が落ちるので、保冷剤か氷を多めに入れて静かに移動願います。 舞い上がった酵母を沈めるため、移動後に冷えた状態で瓶を立てて30分たつとまあいいです。 酵母は健康食品になってますが、とてもまずいのです。


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